ギャラリーに戻る
雪の増上寺 1929年

作品鑑賞

この作品は、冬の静かな寺院の風景を見事に捉えている。真っ白な雪が境内一面を覆い、鮮やかな赤色の寺院の門が背景の紺碧の空と雪の白さと鮮やかに対比し、一瞬で目を引く。雪をまとった木々は優雅に枝を広げ、夜空の下で柔らかな静寂を感じさせる。二人の人物は傘を差して歩き、足跡が雪に淡く記されている様子が、静けさの中に繊細な生命感と動きを添えている。

伝統的な浮世絵の技法が巧みに使われ、細かな線描と色の重なりが空のグラデーションや雪の質感に深みを与えている。落ち着いた配色は、冬の夜の穏やかさを際立たせ、観る者を静謐な世界へと誘う。歴史的には、20世紀初頭に浮世絵の風景画が再評価された時期のもので、伝統美と現代的な内省を融合した作品である。見る者の心に静かな感動を呼び起こし、雪の音や冷たさを感じさせるような没入感がある。

雪の増上寺 1929年

川瀬 巴水

カテゴリー:

制作年:

1929

いいね:

0

サイズ:

2858 × 1859 px

ダウンロード:

関連作品

清水寺の春の雪(京都)
旅行札記Ⅱ 雪の橋立 1921
信州木崎湖 1941年
十和田湖千丈幕 1933
旅行札記Ⅱ 佐渡小木港 雪の明ぼの
東京二十景 大森海岸 1930年
日本風景集 天草御領 1922
日本風景集 豊後 柿瀬 1923
日本風景集 唐津(米蔵跡) 1922