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富士山の裾

作品鑑賞

この静かな風景画は、雪をかぶった雄大な山々と澄みきった青空を背景に、素朴な水車小屋を生き生きと描き出しています。繊細な線描と色彩の穏やかなグラデーションが、日本伝統の木版画技術の熟練を示し、画面に豊かな質感をもたらしています。構図は静寂ながらも動きを感じさせ、曲がりくねった土の小道が鑑賞者の目を歩くひとりの人物へと導き、農村の生活感を描きます。柔らかな大地の色調と、遠くの雪山や空の涼しげなブルーとホワイトの対比が、調和のとれた色彩のバランスを生み出しています。

この作品は懐かしさを帯びた静けさを呼び起こします。自然の静謐さと生活の営みのリズムが感じられ、藁葺き屋根に残る雪や木製の水車が、自然の営みに寄り添う昔ながらの暮らしを強調します。近くの葉の落ちた木は季節の移り変わりを示し、作品に時間の流れを加えています。1953年の制作であり、伝統的な風景のテーマに現代的な構成と技術が融合し、戦後の日本の田園風景と文化の韧性を映し出しています。

富士山の裾

川瀬 巴水

カテゴリー:

制作年:

1953

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サイズ:

4096 × 2776 px

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