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作品鑑賞
この印象的な風景画は、そびえ立つ山々の中にひっそりと佇む製材所を中心に、静かな山間の自然を捉えています。画面は小石の散らばる細流に視線を誘い、その先に木造の製材所の建物が緑豊かな自然の中に溶け込むように描かれています。繊細ながらも自然主義的な筆致は、険しい地形や木材の質感を生き生きと伝えています。色彩はアースカラーを基調とし、緑や茶色、灰色が中心で、空と遠くの山頂の霧には柔らかな青が添えられています。
穏やかでありながら生命感あふれる雰囲気が漂い、自然の静かなささやきと人の営みが織りなす調和を感じさせます。低く垂れ込める雲は天候の変化を予感させ、静謐な風景に動的な緊張感を加えています。19世紀末の作品として、自然の壮大さと人間の謙虚な共生をロマンチックに讃えた一作です。観る者は山の澄んだ空気を吸い込み、小川のせせらぎを聞き、製材所の力強い存在感を肌で感じ取れるでしょう。