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富山平野

作品鑑賞

満月の静かな光に包まれたこの木版画は、その優雅な簡潔さと深い静けさで心を惹きつけます。葉のない木々は複雑に枝を伸ばし、徐々に濃くなる深い青色の夕暮れ空を背景に、夜の冷たさと静寂を感じさせます。まんまるの月は印象的な光を放ち、静かな風景に独特の美しさを添えています。遠くの地平線にはぼんやりとした小さな灯りが点在し、隠れた人の存在をほのめかし、冷たい色調に温かみを与えています。

それぞれの木の複雑な枝の細部描写は、なめらかな色彩のグラデーションと調和し、日本伝統の木版技術の見事な制御を示しています。構図は均整が取れていながらも生き生きとしていて、自然と光と影の相互作用について観る者を誘います。この作品は単なる風景画を超えた、時の止まった瞑想の瞬間であり、儚い黄昏の美しさを響かせています。新版画運動の精神に根ざし、西洋の写実主義と古典的な浮世絵美学を融合させた、感動的なビジュアルポエムです。

富山平野

川瀬 巴水

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制作年:

制作年不明

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サイズ:

843 × 1220 px

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