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作品鑑賞
巨大な岩の上に建つ建物群が、重厚な岩肌の質感とともに厚塗りの筆遣いで描かれ、その存在感が際立っています。夕暮れの薄暗い空の中、建物の根元には煙がたなびき、黒い影の人々が不穏な集まりを見せるなど、緊張感が漂います。遠くには三羽の白い鳥が翼を広げて飛び、希望や逃避の象徴のようにも感じられます。岩の堅牢さと空の軽やかな動きが対比をなす中で、この孤立した都市は荘厳さと脆さが同居する印象を与えます。
色彩は曇りがちで抑えられたトーンが主体で、茶色や黄土色、燃え盛るような赤が岩壁や建物に彩りを与え、岩の基部には火の気配がほのかに漂います。構図は岩の重さと鳥たちの軽やかさのバランスに優れ、地上と空間の境界で緊張感を織り成しています。ゴヤの時代背景における社会的動乱や破滅の脅威を映しつつ、文明の持続と孤立を描写。観る者は荘厳でありながらも不安を覚える、この岩の上の都市に心惹かれます。