この肖像画は、石の壁に寄りかかるように優雅に座る若い王女を捉えている。彼女の姿は柔らかく暖かな光に包まれ、背後の暗い葉の影と美しい対比を成している。繊細な刺繍が施された淡い紫色のドレスは高貴さと優雅さを表現し、手に持つレースのパラソルが洗練された女性らしさを添えている。画家は光と影を巧みに操り、滑らかな布地から繊細な肌まで丁寧に描写し、わずかに微笑む表情から静かな親しみやすさを感じさせる。

構図は安定感がありながら動的で、石壁と絡みつく蔦の垂直線が王女を囲み、自然に視線をその穏やかな表情へと導く。背景の落ち着いた土色がドレスの鮮やかさを際立たせ、彼女を画面の明らかな焦点にしている。感情的には、静かな気品と若々しい純真さを呼び起こし、19世紀貴族の社会文化的ニュアンスを反映している。この作品は肖像画と雰囲気の物語性を融合させ、被写体の姿だけでなく精神性も見事に捉えている点で重要だ。