ギャラリーに戻る

作品鑑賞
この作品は炎が消えかけたたき火のそばに座るアラブの騎手と、そのそばにたたずむ力強い馬を描いています。騎手は鮮やかな赤と深い青の衣をまとい、地面に腰を下ろしながらも警戒を怠らない姿勢で、荒野の夕暮れを静かに見つめているようです。画家の筆致は滑らかでありながらもテクスチャー豊かで、砂塵と熱気が混ざる砂漠の夕暮れの空気感を巧みに表現。暖かく土っぽい色合いの衣服や栗色の馬の毛色は、鞍の青や霞んだ背景の中で巧みに対比され、絵に深い感情的な奥行きを与えています。影が穏やかに地平線に溶け込み、この情景に静けさと広大な世界の余韻をもたらしています。19世紀半ばのロマン派オリエンタリズムの精神を見事に映し出すこの作品は、現実と想像の狭間にある異国の世界を感じさせます。