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作品鑑賞
この静謐な木版画は、1924年の夕暮れ時の景色を捉えている。伝統的な日本の堂が広大な都市の眺めを見守り、深い星空がその上に広がる。堂の瓦屋根と木の梁の細部は繊細なグラデーションで表現され、質感豊かに描かれている。堂の向こうにはうっすらと灯る明かりが都市の広がりを示し、自然と文明の対比を生み出している。冷たく澄んだ紺碧の空が全体を包み込み、昼と夜の移ろいの静けさを感じさせる。
構図は見事に調和し、屋根の水平線と柱の垂直線が対称を成し、手前の石畳が視線を奥へと導く。一つだけ輝く星が詩的なアクセントとなり、静謐で永遠のような感覚を添えている。この版画は、新版画運動における伝統的な木版技術と西洋の光と透視の影響の融合を示し、深い情感と雰囲気を醸し出す作品だ。