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作品鑑賞
この作品は、夕暮れ時の寺院の庭を静謐に捉えた木版画で、長く伸びた影が木漏れ日と繊細に絡み合っています。構図は、前景にある寺院建築の暗いシルエットと、背景の鮮やかな紅葉が絶妙にバランスを取り、石畳に映る光と影のリズミカルなパターンが観る者を静寂の中へ誘います。色彩は、抑えめな青や茶色、そして紅と緑の鮮やかな対比で、自然と建築の調和、穏やかな瞑想の空気感を生み出しています。
1952年に新版画の大家によって制作されたこの作品は、伝統的な木版技法を用いながらも自然光と雰囲気に対する新しい感覚を注入しており、その緻密な技術が際立ちます。感情的には、神聖な空間で時間が止まったかのような静けさと瞑想的な気配を感じさせ、季節の移り変わりを示す色彩は無常観を漂わせています。木版画の持つ静謐さと深い感情表現の力を示す優れた作品です。