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ナダ

作品鑑賞

この不穏なエッチング作品は、陰鬱で神秘的な空気に満ちた影の多い場面に観る者を誘い込む。前景に横たわる人物は、粗く表現豊かなエッチングの線描で描かれ、肉体と影の境界が曖昧だ。人物は「Nada(無)」と記された紙を握っており、絶望と存在の空虚さを象徴している。周囲には幽霊のような頭部が浮かび、苦悶の表情で暗闇に漂う。密度の高い構図と強烈な光と影の対比が、超自然的な雰囲気と心理的な重圧感を強調する。モノクロの色調は、対比と粒子感によって感情のインパクトを高め、囁くような恐怖と手に取るような悲しみを伝えている。

この作品は憂鬱と虚無感を強く喚起し、社会的混乱や個人的苦悩が背景にあった時代を映し出す。技法はゴヤの典型的表現であり、大胆で粗削りながらも人間の魂の闇をとらえている。この小さな作品は闇と沈黙の哀美を凝縮し、虚無と絶望のこだまする声に観る者を向き合わせる。簡潔で強烈なイメージを通じて、無と喪失についての深い瞑想に誘う。

ナダ

フランシスコ・ゴヤ

カテゴリー:

制作年:

1810

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サイズ:

4096 × 3214 px
321 × 222 mm

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