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作品鑑賞
この作品は静かな雨の夜、伝統的な茅葺き屋根の家々が並ぶ通りの風景をとらえています。深い青緑系の色調を主体に、雨の音が聞こえてきそうな細かな縦線で静かに降る雨を表現し、灯りが濡れた道に柔らかく反射して温かさを添えています。一本の傘をさしたひとりの人物が歩く姿が、静寂の中に孤独感と人間味を与えています。
画面の左側には大きな木のシルエットが暗くたたずみ、右側の家々の灯りとの対比が巧みに構成されています。自然と人の営みが重なるこの情景は、昭和7年(1932年)に制作された浮世絵の伝統を生かしつつ、現代的な感性で日常の詩情を描いた名作です。